中古車市場の価格ってどうやって決まっているか知っていますか?
多くの人は、日本国内の需要が主な要因だと思っているかもしれません。
しかし、実は輸出が中古車価格に大きな影響を与えているのです。
本記事では、バングラデシュ、パキスタン、シンガポール、マレーシア、ロシアなど、
各国の中古車市場の特徴と規制が価格にどのように影響しているかを詳しく解説します。
また、番外編でアラブ首長国連邦(UAE)の市場情報もお届けします。
中古車市場を理解し、売却の際に賢く取引するためのヒントを見つけてください。
中古車の輸出は誰がしている?
一般ユーザーが自分の車を海外に販売して輸出するという人はまずいないでしょう。
通常、日本国内の業者オークションで輸出業者や外国人バイヤーによって車両を買い付け、
海外市場に輸出しています。
業者オークションとは?
業者オークションは、中古車販売業者が車両を売買するためのオークションです。
マグロの競りをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。
一般の消費者は直接参加できず、中古車業者のみが参加可能です。
全国各地、日曜日以外毎日どこかのオークション会場で開催しており、
毎週数万台の中古車が出品され、取引されています。
輸出業者と外国人バイヤーの役割
輸出業者や外国人バイヤーは、業者オークションで出品されている車両を買い付けます。
彼らは、バイヤーのニーズに合った車両を見つけ、落札後に輸出手続きを行います。
例えば、バングラデシュやパキスタンなどの国々では、日本の中古車が高い人気を誇り、
これらの国々に向けて多くの車両が輸出されています。
このように、業者オークションでの取引が中古車市場の価格に大きな影響を与えているのです。
次項では、具体的な国ごとの市場動向について詳しく見ていきましょう。
輸出国1:バングラデシュ
バングラデシュは2023年に日本から2万台以上の中古車が輸出されています。
右ハンドル車のみ輸入が可能で、また製造から5年以内の車両しか輸入できないという規制があります。
これにより、比較的新しい中古車が高値で取引される傾向があります。
特にトヨタのカローラクロスハイブリッドやプレミオといった車種が人気です。
ボディカラーもレッド系や、グレー系といったカラーが人気があり
その影響で、中古車相場もホワイトやブラックより高く取引されています。
しかし、2024年7月に発生した暴動により、バングラデシュへの中古車輸出が一時的にストップしました。
この影響で、バングラデシュに人気のある車両の中古車相場が一時的に下落しました。
暴動は公務員採用の特別優遇枠の改革要求を発端としたもので、
学生のデモが頻発し、治安当局との衝突が続いたためと言われています。
その後状況は改善され、相場も回復していています。
・カローラクロスハイブリッド
・プレミオ
・エスクァイアハイブリッド
・カローラアクシオ
・ハイエース
など
輸出国2:パキスタン
パキスタンはスズキのインド法人を筆頭に、現地で日本メーカーの新車が多く販売されています。
そのため、現地生産のメーカーを保護する意味で、商業輸入は禁止されており
業者が個人名義を借りて、個人輸入しているという背景があります。
バングラデシュ同様、右ハンドル車のみ輸入が可能で日本車が特に人気があります。
また乗用車の2WD車は製造より3年落ち、4WDは製造より5年落まで輸入ができます。
SUVに関しては2WD/4WDともに製造より5年落まで輸入できます。
ランクルシリーズは富裕層に人気が高く、特に輸入規制限界の5年落ちが特に相場が高くなる傾向にあります。
3年落ちよりも5年落ちになる方が関税額が軽減し、需要が高くなることによる相場の高騰といえます。
ランクルシリーズ以外だと、軽自動車やコンパクトカーが人気です。
特に、ダイハツのミライースやホンダのヴェゼルハイブリッドが挙げられます。
これも排気量が小さいほど、関税額が軽減されるため輸入しやすい事が影響しています。
現地法人のスズキがある為、軽自動車への人気が高いこともその要因とも言えます。
しかし、パキスタンでは、時折輸入禁止措置が取られることがあります。
2022年には外貨準備の枯渇を防ぐために、自動車を含む33品目の輸入が禁止されました。
このような規制により、中古車相場の下落があることを覚えておきましょう。
・ランドクルーザー200/250/300/150プラド
・ミライース
・ヴェゼルハイブリッド
・ヤリス(1,000ccモデル)
・ライズ
など
輸出国3:シンガポール
シンガポールは2023年の世界の1人あたり名目GDPランキングで5位(日本は34位)と裕福な国になります。
ただ、国土面積が東京23区ほどしかないため渋滞緩和や環境保護の観点から、
車両を保有するには権利証明書(COE)が必要になります。
排気量カテゴリーにもよりますが、このCOEを入札するのに日本円で約900万円がかかり
さらに物品税や消費税、登録税など車両を手にするのに多額の費用がかかります。
輸入規制としては、右ハンドル車のみで新車登録月から35ヶ月までと新しい車両しか輸入できません。
特殊な規制で行くと、日本国内で新車登録後14日以内に輸出のための抹消登録され、
抹消登録後3ヶ月以内にシンガポールに到着した車両は新車として登録できる事です。
中古車の追加課税がないため、新車登録後、すぐ輸出抹消してしまうケースがあります。
例えば、2023年6月に発売された40系アルファード/ヴェルファイアのハイブリッドタイプの多くが
新車登録直後に抹消されていました。
シンガポール政府は環境保護の観点から、ガソリン車やディーゼル車の廃止を目指しており、
ハイブリッド車の需要が高く、多くのハイブリッド車が輸出されているのも特徴です。
・40系アルファード/ヴェルファイア(ハイブリッド)
・ヴェゼル
・ノアハイブリッド
・ステップワゴンスパーダハイブリッド
・シエンタハイブリッド
輸出国4:マレーシア
2023年の中古車輸出台数は3万5千台と多くの中古車が輸出されている国ひとつです。
そのうち9割が乗用車の輸出になっており、最も乗用車が輸出されている国でもあります。
マレーシアは産油国のためガソリン価格が安いのも特徴です。
レギュラーガソリン(RON95)の価格は1リットルあたり日本円で約63円です。(2024年2月時点)
そのため、ハイブリッド車や電気自動車よりもガソリン車の人気が高いのが特徴でもあります。
隣国のシンガポールとは車種の需要が明確に異なっています。
マレーシアの輸入規制は、右ハンドル車のみ可能であり
登録年規制は、新車初度登録からの経過月数12ヶ月から59ヶ月までの車両しか輸入する事ができません。
シンガポールなどと違い、日本で登録後1年(12ヶ月)経った中古車でないと輸出できないところです。
この登録年規制が顕著に現れているのが、40系ヴェルファイア(ガソリンモデル)になります。
2023年6月に発売し、2024年7月頃から登録後12ヶ月経過した車両の相場が一気に高騰しました。
実は、アルファードやヴェルファイアなど現地の正規ディーラーで販売されています。
しかし、これらの車両はオプションなどの選択肢がほとんどなく、30系のアルファードの時には
ベージックグレードかエグゼクティブラウンジの最上級グレードの仕様しかありませんでした。
中間グレードやモデリスタのエアロパーツもないため、30系アルファードのS Cパッケージ
(メーカーナビ、サンルーフ、モデリスタフルエアロ付きの車両)が高騰した要因になります。
・アルファード/ヴェルファイア
・ハリアー
・レクサスRX
・ヴォクシー
・ステップワゴンスパーダ
など
輸出国5:ロシア
ロシアへの輸出は2022年2月24日のウクライナ侵攻で一時的に輸出が減少しましたが、
2023年は日本から21万台もの中古車が輸出されており、ウクライナ侵攻前以上の
勢いを取り戻しています。
しかし、2023年8月に日本政府はロシアに対する輸出禁止措置を拡大し、
排気量1900cc超の自動車やハイブリッド車、電気自動車などが輸出禁止に追加されました。
現在では、排気量が小さく、年式も古い日本の中古車などがロシアへ輸出される傾向にあります。
ロシアの輸入規制ですが、ハンドルの規制はなく左右どちらでのハンドルでも輸入が可能です。
また登録年規制もなく、古い年式の中古車もロシアへ輸出できます。
600万円超の乗用車は輸出禁止のため、比較的安い車両がいくのが特徴です。
日本から直接ロシアへ輸出できない車両は、モンゴルやジョーシアなどの国を経て
ロシアへ再輸出されている事がわかっています。
このように、ロシアへの中古車輸出は複雑な状況にありますが、
依然として高い需要が存在するため、様々な方法で取引が行われています。
・ヴィッツ
・フリード
・ヴェゼル
・レヴォーグ
・ステップワゴンスパーダ
など
番外編:アラブ首長国連邦(UAE)
アラブ首長国連邦は輸出国ランキングで常に3位以内の常連国でありながら、
UAEは、左ハンドル車しか輸入ができません。(年式規制などはなし)
そのため、日本から輸入された中古車は、一旦UAEのフリーゾーン(経済特区)に持ち込まれ
そこから中近東およびアフリカの各国へ再輸出されます。
つまり、UAE国内へ販売されることはなく中継国としての役割をなしています。
また、UAEには右ハンドル車を左ハンドル車へ改造する業者が多数存在し、
左ハンドル車のニーズがある国にも応えらるように盛んにビジネスが行われています。
・ノートeパワー
・ハリアー
・ランドクルーザープラド
・リーフ
・RAV4
など
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